先日、頭痛と頚から肩にかけてコリを抱える女性を診た。
よく聞くと慢性的な便秘も抱えていた。
数日後、便通が回復すると頭痛と頚肩のコリまでとれてしまった。
これはとても示唆に富んだ出来事だと思った。
世にはたくさんの健康法があふれているが、“排泄”というキーワードで概観したとき、その真贋が見極められる。
また言い方を換えれば“排泄“を軸に生活を組み立てていったとき、それは立派な健康法たり得るということでもある。
指圧の世界で伝統的に腹部が重視されてきた理由のひとつもそこにあるのかもしれない。
まずは
食事療法で定番といえる玄米、なぜ玄米なのか?その疑問も“排泄”という観点からみればとてもシンプルに説明がつく。
食物に含まれる食物繊維は消化吸収されないため、そのまま排泄される。つまり便の元となる。それは腸内の老廃物を絡め取りながら、また腸内の有益菌のエサとなりながら通過していくもので、腸内環境を整えるためにも有用といえる。
逆に精白された米や小麦、砂糖などは便を停滞させ、便秘の要因となりうる。
停滞した便は、腸壁にこびりつき血管を通して老廃物が吸収され全身に運ばれる。前述の女性の一連の症状も自家中毒によるものと言えなくもない。
食物繊維をたくさん含む穀物と野菜を中心とした食生活は健康の基本といえることができる。
なぜ動物性はいけないのか?消化しづらいために長時間腸内に停滞することが問題となる。同時に腸内の悪玉菌が好んでエサとするのも動物性の脂肪やタンパク質なのだ。肉を食べると便やおならが臭くなるのはそのためだ。
肉食する欧米人は日本人に比べて腸が短い。腸内で腐敗する前に排泄できる構造になっている。ところが穀物菜食の消化吸収に優れた日本人の長い腸では腐敗した肉が腸内に停滞することになり、その老廃物や毒素が腸の血管を上行して身体のあらゆる部位の病源となる。
また腸内環境で見逃せないのが、腸内で生息する菌の存在である。善玉菌、悪玉菌という名称で呼ばれているが、悪玉を駆逐すれば健康という訳ではない。
日和見菌を含めてバランスよく共生している状態が望ましい。なぜなら悪玉菌といえども、からだの免疫機構がそれを駆逐しようとしない事実からも、必要悪が認められる。
実際の研究からも悪玉菌が免疫を活性化するなどの有益性が確認されている。ただそのバランスが崩れ悪玉菌が異常に増殖することによってガンを始め様々な疾患を引き起こす原因となる。また近年アレルギーとの関係性も示唆される。それは小腸が人体最大の免疫器官であること、そして脳に次いで神経細胞の多い器官であることに由来する。アレルギーでない人とアレルギーの人を比較したとき腸内細菌分布の有意な差が認められたという報告もある。食生活の欧米化とアレルギーの増加の相関関係は腸内環境から十分に説明がつくものだろう。
プロバイオティクスとは腸内で有益な活動をする菌のことだが、それを食品から摂取することは有益だろう。
乳酸菌飲料やヨーグルトなど安価で手軽に手に入るものが多い。最近では
植物性の乳酸菌飲料もある。さわやかな飲み口でいい。
またビール酵母には各種アミノ酸やミネラルが含まれておりサプリメントとして活用できる。なにより酵母菌は善玉菌のエサになる。
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食品に関して付言すれば、刺激物を控えることも大切になる。不眠症の患者で治療効果が芳しくなく、その原因を探ったとき、お茶やコーヒーなどのカフェインの摂取があった。一時的にカフェインの摂取を中止させたところ不眠症が改善した事例がある。カフェインをはじめとする嗜好品、刺激物の睡眠を妨げる作用、精神に及ぼす影響を看過できない。長期間の不眠や精神的な起伏は体を確実にむしばんでいく。質のよい睡眠こそが体にとって最高の薬であることは論を待たない。
また食生活だけでは片手落ちであり、人間以前に動物である我々は食物確保のために運動が不可欠であり、そのように体はできている。
運動せずに食べてばかりいれば肥満や生活習慣病を誘発する。
特に自然の摂理にかなった空腹時運動は末梢循環を良くし、自律神経を整える効果がある。
食物を食べると、からだは消化吸収しようとする。
その時、胃や腸などの内臓に血液が集まってくる。
内臓を動かすため、消化液を分泌するため、栄養を運搬するためだ。
このとき運動をしてしまうと、今度は筋肉を動かすために血液が必要となり、内臓と筋肉との間で血液の奪い合いになってしまう。
そうなると、どちらにとっても良い結果とはならない。
お互い必要な血液を確保できないために、運動能力を発揮できず、また消化も中途半端となり内臓に負担をかけてしまうことになるのだ。
つまり食事と運動のタイミングが重要になってくる。
空腹時に運動することは、血液が筋肉そして身体のすみずみまで行き渡ることができるということ。
手足が冷える、脂肪がつきやすい、肩がこる、腰が痛い、これらの症状はたいてい血液の循環が良くないことや、それに伴う冷えがその根底にある。
細胞一つ一つが新陳代謝してイキイキと活動するためには、血液が滞ることなく流れていることが大切になる。
空腹時に運動すると末梢循環が良くなり、からだに活力が出てくる。
空腹時に運動する、食後はゆったりと休息する。
これはからだの生理に沿った本質的な生活リズムといえる。
朝から昼にかけて活動的に、夕方から夜に向けてリラックスしていく。
人間は狩猟をしなくなった、また農家でない限り食物を生産するための作業がなくなった。
もっぱらデスクワークに従事するようになって健康を害する人が増えた。
体操、ヨガ、ウォーキング、自然あふれる環境でさわやかに運動することは、人間としての自然を取り戻す普遍的な営みであるといえる。
足裏の刺激も同様。
不健康な人は足が固い、臨床の現場でつぶさに感じる事実だ。
ボテッとして鈍くむくんだ足、またはパンとはってカチカチになった足。
逆説的に言えば、足指、足背、足底、足関節がしなやかでやわらかいことが健康の条件なのではないかと。
スマートでアーチのきれいな足にするには。
天然の竹でも良いし、量販店ではプラスチック製で突起がついたものを安価で手に入れることができる。
なにより体重を利用して踏むという動作が良い。
それは筋トーヌスによる垂直圧、安定持続圧を可能にする。
指圧の要諦に他ならない。
あまりこまめに動かさず、ジーッと踏んでいるのが効果的。
それは指圧が永年の経験から培った支え圧の原理そのもの。
体表の警戒心がとけたところで圧は内部に浸透する。
昨今の不定愁訴は肩から上に限局している。
それはVDTに代表される現代の職務形態。
さらに栄養の過剰摂取と運動不足からくる様々な症状だ。
目(眼精疲労、白内障、緑内障)、耳(耳鳴り、突発性難聴、メニエール)、鼻(鼻炎、蓄膿症)にはじまり脳血管障害まで。
現代病ともくされる花粉症もまた、その前駆ではないかと。
頭脳労働、パソコン仕事により、脳、神経、目、手指は酷使されおのずと気は頭にのぼせ上がる。
気は滞り、病む。
すなわち病気である。
野性動物はもちろん裸足で駆け回っている。
始終、石ころや木の根を踏んづけているだろう。
かわって人間はといえば、まず歩く時間がどれだけあるだろうかと。
さらに足は靴下と靴に守られ、平坦な道を歩けば、その刺激量はたかがしれている。
それでは人間の宿命的な疾患と言われる腰痛はどうかと言えば、頭に気がのぼるのに比例して下半身は気が抜けてくるのが自然の摂理。
まさしく腰抜け状態。
腰に力なく、しなやかに支えきれなくなることによってヘルニアなどズレや痛みを生じるのだろう。
血液循環の側面を強化するならば温熱が有効になる。
最新の免疫学では体温が一度上がると免疫力が5倍になるといわれている。
運動で少し汗ばむ状態、これが体温一度上昇の目安となる。
古典に還れば中国で1900年以上前に編纂された「傷寒論」から示唆されている。
今流行のゲルマニウム温浴や岩盤浴も結局は温熱療法から派生しているものだ。
昔ながらのお灸、砂風呂、びわの葉温灸、こんにゃくシップ、枚挙に暇がない。
こうした観点から言えば、使い捨てカイロの発明はノーベル賞候補筆頭と言っても過言ではない。
触れて冷たいところを温めればまず差し支えない。
さらに効率的に温めたければ、上半身では第一胸椎周囲に、下半身は仙骨を温める。
入浴はぬるめのお湯の半身浴がすすめられる。
なぜなら、肉でも魚でも強火で焼くと表面は焦げても中身が生であるように、
人間の体もまた、熱いお湯につかれば温まったように感じるだけで芯まで温まっていないからだ。
むしろ全身的な熱刺激に対して体は冷やそうと働き、かえって逆効果になりかねない。
部分浴の効用というのも見過ごせない。
冷たい液体に熱い液体を混入するとそこに対流が生まれることは自明の理だが、この対流を体内に起こすことが、芯にこびりついた冷えをとる秘訣となる。
冷たい飲料も控えたい。体温の源を体内で火が燃えているとイメージすれば、水分の大量摂取はその火に水をかけることと同じと言える。
水を大量に飲む健康法もあるが、自分の体質の見極めを誤れば逆健康法になりうる。
最近は腹巻きを活用している。腹部、腰部の保温はもとより、適度な締めつけ感がいい。圧力に抗するように自然と腹式呼吸が促される。古来着物に帯をしめていた。武道の世界でいまだに適用されているのも、締めつけることによるコア、腰肚感覚の活性化をねらっているのだろう。
受験生がハチマキするのも面白い。
しめることで目覚める感覚がある。
ゆるみ、たるみは本当の自由を生み出さないだろう。
日本の伝統文化には抑制的な美が貫く。
健康もまたしかり。
世界で始めてストレス学説を提唱した、カナダの生理学者ハンス・セリエ博士(ノーベル賞受賞者)は、「ストレスから逃れるのに一番大切なことは、”感謝の念”を持つことである。」と言っている。彼は自らのガンを克服している。強烈なメッセージと言わざるを得ない。
コファ式健康法まとめ
1.未精製の食品をとる。
2.食物繊維豊富な野菜をとる。
3.動物性の食品をひかえる。
4.プロバイオティクスを活用する。
5.からだをあたためる。
6.刺激物をひかえる。
7.空腹時運動を励行する
8.腹部指圧をする
9.足の裏を刺激する。
10.感謝の気持ちをもつ。